ヨルダン、死海の水位変化

アハマド アルハンバリ(自然科学研究科・地球生命圏科学専攻:近藤研究室)

Ahmad AL-HANBALI, Hussam AL-BILBISI, Akihiko, KONDOH(2006): Monitoring the Dead Sea Area Changes Using Remote Sensing and GIS. Journal of Japan Society of Hydrology & Water Resources, 19(6), 483-490.

アハマド君の故郷、ヨルダンは乾燥地域に属しており、水資源の確保が国の将来を決める重要な要素となっています。ヨルダンの西部には世界で最も標高の低い場所にある死海があり、塩分濃度が高いため、体が浮いてしまうこととでも有名です。最近はエステに使う“死海の塩”をご存じの方も多いと思います。しかし、その死海の水位が下がりつつあります。これがどのような影響を死海沿岸諸国に及ぼすのでしょうか。

このように、死海の水位は下がり続けており、特に1960年代から水位低下の速度を増しています。死海はイスラエル側の水深が浅いため、イスラエルのリゾートでは海岸が遠くなってしまいました。
(Yahooニュースより)
水位が下がると、死海の面積は小さくなります。そこで、衛星データを使って1973年、1987年、2004年の水面面積および周囲の土地被覆分類を行いました。
死海は、北側の大きな湖盆と南側の小さな湖盆に分けることができます。琵琶湖と同じですね。南側の湖盆は水深が浅いため、1987年の画像では水面が消滅しています。その代わり現れたのが蒸発池(Evaporation Pond)です。
これが蒸発池の正体です。死海の塩水には様々なミネラルが含まれているため、それを抽出する産業がヨルダンとイスラエルに立地しています。この広大な蒸発池に、死海の北側湖盆から塩水を導入し、ミネラルを抽出したあと、再び高鹹水となった塩水を死海に返しています。その水使用量はアハマド君の試算によると、近年の死海の水位低下の半分近くはこれらの産業の水利用で説明できるとのことです。水位低下速度は年間約1mに達していますが、水位がさらに低下するとこれらの産業の立地にも影響を及ぼしますので、近い将来何らかの相互作用が生ずると思われます。

死海の水位低下はヨルダンの水資源にどのような影響を及ぼすでしょうか。また、現在のヨルダンの水資源にはほかにどんな問題があるのでしょうか。これがアハマド君の学位論文になることになります。